取材・文 = 高坂はる香
古くから親しまれる名作オペラはもちろん、現代のオペラ作品、宗教曲や交響曲、そして歌曲と、幅広いジャンルで活躍する、三宅理恵さん。歌の道を志すことになった経緯から、アメリカ留学時代に学んだこと、声楽家として大切にしていきたいことまで、お話を伺いました。
2019年2月 紀尾井 明日への扉23
三宅理恵 ソプラノ・リサイタル
写真提供:紀尾井ホール/(C)藤本史昭
2015年6月 ニッセイ名作シリーズ2015
オペラ『ヘンゼルとグレーテル』グレーテル役
写真提供:日生劇場/撮影:三枝近志
―2021年は、新国立劇場のストラヴィンスキー『夜鳴きうぐいす』の夜鳴きうぐいす役として、はじめてロシア語のオペラに出演されました。新型コロナの影響により、新制作でありながらリモートでの演出となるなど、挑戦の多い公演だったと思います。
最初は不安しかありませんでした。ロシア語は文字も読めないうえ、ストラヴィンスキーの作品は音も難しいので、しばらくは言葉と音との戦いでした。でも実際に勉強を続けていくと、ロシア語が自分に合っていたのか歌いやすいと感じるようになり、音楽を作るのもとてもやりやすかったです。結果的には、私の声に合っている役でした。
リモートでの演出は、画面越しで見えるものに限界があります。また、そもそも私たちがマスクをして歌っていて顔が見えないため、演出家から、演技や表情について細かい指示がほとんどありません。そのため、歌詞と演出家の意図をしっかり読み取り、歌い手が自分たちで考える必要があるのが、これまでの公演との大きな違いでした。
今回の出演者はチームワークもよかったので、お互いにアドバイスをしあいながら、短期間であれだけの舞台に仕上げることができました。
2021年4月 新国立劇場オペラ
『夜鳴きうぐいす/イオランタ』より 夜鳴きうぐいす役
写真提供:新国立劇場 撮影:寺司正彦
―2018年には、藤倉大さんのオペラ『ソラリス』にハリー役で出演されました。今年8月には、渋谷慶一郎『スーパーエンジェル』でアンドロイドと共演されますし、チャレンジングな舞台に多く挑まれている印象です。
ついにアンドロイドと一緒に歌うということで、一体どうなるのか、まだわかりませんが(笑)。
これまで、現代曲のオペラはいくつかチャレンジしたことがありますが、藤倉大さんの作品は、いわゆる「現代もの」と言われるものの中でも別世界な気がします。ドビュッシーのようなところ、ベルカントのオペラのようなところもあり、耳に残る心地よい音楽が魅力的です。
私はもともと現代作品が得意というわけではないのですが、実際に歌うことで大さんの世界観が見え、また機会があったらぜひ歌いたいと感じるようになりました。
2018年10月 東京芸術劇場コンサートオペラvol.6
藤倉大/歌劇『ソラリス』*日本初演
写真提供:東京芸術劇場(c.HIKARU★)