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ピックアップアーティスト Vol.27 鵜木絵里の今

Interview | インタビュー

二期会ゴールデンコンサート at 津田ホール 2013/14 SEASON
2013年9月28日(土) 16:00  Vol.41「鵜木絵里 ソプラノ」


スペイン歌曲とシェイクスピアに魅せられて

きらめく声といきいきと心温まる歌唱で、世代を超えて聴衆を魅了し続ける鵜木絵里が、ついに二期会ゴールデンコンサートに登場。
こだわりのプログラムとプロフェショナルな演奏を存分に堪能できるリサイタルだ。

スペイン歌曲との出会い 【抑圧された情熱】スペイン音楽の魅力 スペイン歌曲は自分の感性に一番フィットするんです

鵜木絵里(以下、鵜木):子供のためのプログラムも大好きですが、今回のリサイタルでは私の違った側面、特に長年あたためてきた歌曲の世界を取り上げたいと思いました。
実は二期会のスペイン歌曲研究会の創立メンバーでもあります。学生時代にスペイン歌曲に出会い、模索しながら歌っていましたが、学生の時は譜面も情報などもなかなか集められなくて。それが10年くらい前に本格的に勉強する機会があり、7年前には世界遺産の街として有名なスペイン、ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)と言うところで行われるヨーロッパ最古の音楽講習会に3週間ほど行って勉強しました。この地は、キリスト教信者の巡礼地でもあります。聖ヤコブの遺骨が埋葬されているという事で、巡礼者の証である帆立貝をつけて各地から巡礼してくる美しい場所でした。
スペイン歌曲って、イタリア歌曲が明るくからっとしていて、ドイツ歌曲がロマンを歌うのであれば、うだるような熱さの中にウェットな土臭さがある。内に秘めた情熱のほとばしりは、恨み節のようで、どこか演歌に通じるような気がしているんです。
私、日本の歴史が好きなのですが、スペイン歌曲の持つ【抑圧された情熱】は、日本人の民族性、内に秘めたどこか土着性の感性とも強くフィットするものが凝縮されていると思うのです。

――そんな中で今回の選曲の決め手は何ですか

鵜木:まず、モンポウは大好きですね。モンポウは、ホセ・カレーラスなどテノールがよく歌っているので、女声が歌うのは珍しいかもしれません。オブラドルスやロドリーゴは聴き心地もよいと思います。
どれもリズミカルで変拍子が心地よく、歌っていても聴いていても激しく琴線を揺さぶられる音楽ですね。
ホアキン・ロドリーゴとの出会いは、中学校の頃、ニッカ・ウィスキーのコマーシャルでキャスリーン・バトルが歌っているのを聴いたのがとっても印象深くて「ああ、なんて綺麗な曲なんだろう」と釘付けになったのを覚えています。それが、ロドリーゴ『4つの愛のマドリガル』の4曲目De los alamos vengo madre(松林に行ってきたお母さん)でした。それをずっと忘れていたのですが、大学に入ってこの曲が合うんじゃないかと教えてくださった方が居て・・・。歌ってみたら自分の声質に合っていて、「ああ!あのCMの曲だったのか」と衝撃を受けたんです。その出会いをきっかけにほかの3曲についても調べて歌ってみました。
リズムも音形もその頃勉強していたイタリア歌曲やドイツリートなどのどの曲とも違っていて、歌いながら呼吸するような新鮮さがありました。それで今回、ぜひ歌いたかったんです。
あまり歌われることのない短い曲も多いのですが、その中を吹き抜ける風や熱さの中に込められた躍動感をご一緒に楽しんでいただきたいですね。

シェイクスピア イン ラブ

鵜木:中学生の時、小田島雄二さんの日本語訳で「冬物語Winter's Tale」の中の役をさせていただいたことがありました。王の嫉妬によってもたらされた悲劇の物語からはじまるシェイクスピア晩年の傑作でが、まさに目から鱗というか、人間の本質に迫る言葉の力と美しさに気付き、その後、舞台に親しむきっかけとなったのです。
その後、2009年にロンドンでロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(Royal Shakespeare Company)の『真夏の夜の夢』と『ウィンザーの陽気な女房たち』を観て感じたのは、お芝居と音楽が本当に密接だという驚きでした。リュートを弾きながら歌が入ってきた瞬間にも、1600年代のシェイクスピアの時代の歌が現代の舞台で歌われていることにものすごく感動したのを覚えています。シンプルな日本のわらべ歌のような曲もあったりしますが、イギリスの演劇文化と歴史の奥深さを体感することができました。
今回のリサイタルでは、「お気に召すまま」「十二夜」「恋の骨折り損」などのシェイクスピアの詩に魅力的なメロディーを付けたクィルターやアージェントの曲をご紹介するとともに、ロミオとジュリエットの悲恋物語を原作とするオペラ『カプレーティ家とモンテッキ家(ロメオとジュリエット)』、『ファルスタッフ』、『ミニョン』から、私の声に合っていると思われるアリアの数々をおとどけいたします。ベッリーニ、ヴェルディ、トマなど、世界の巨匠たちがこぞってシェイクスピアの作品を取り上げていますが、その戯曲の中にある普遍性を知れば知るほど「シェイクスピア in Love」、まさに夢中です。400年以上の時を経ても色あせることのない美しい曲の数々は知れば知るほど素晴らしく、今後も長く歌い続けてゆきたいですね。

リサイタルでの注目ポイント

第2部後半のアリアでは、許されぬ恋に涙し、愛するロメオを探しせつない想いを歌うジュリエッタ、キュートに恋する娘役の極めつけナンネッタのアリア、そしてコロラトゥーラも華やかな「私はティタニア」など、極めつけのオペラアリアの数々も聴きどころ。

2010年8月。ロンドンのサマーセットハウスという場所でグラインドボーン音楽祭の中継を行っていました。
ピクニックをしながらグラインドボーンと同じように夏の野外での演奏を楽しみました。
演目は『ヘンゼルとグレーテル』指揮は大野和士さん(!)でした。

2009年8月のものです。高校生の時から大好きだったビートルズ、初めて彼らの出身地リバプールを訪れ、ビートルズ博物館なる建物の前で大興奮しているスナップです。