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ピックアップアーティスト Vol.49 伊藤達人の今

Interview | インタビュー

2016年の東京二期会オペラ劇場『ナクソス島のアリアドネ』で二期会デビューして以来、快進撃を続ける伊藤達人さん。あらゆる役を全力で演じ、歌う姿は観客に感動と笑い?を与えています。そんな魅力あふれる伊藤さんに話を聞きました。

2016年11月 東京二期会オペラ劇場
『ナクソス島のアリアドネ』ブリゲッラ役(右)
日生劇場/撮影:三枝近志

―外で伸び伸びと遊び、天真爛漫な子供時代を過ごしたイメージを持ちますが、小さい頃はどのように過ごし、いつから音楽に興味を持つようになりましたか。

実家が精肉店と食堂を営んでいました。兄、僕、弟2人の4人兄弟です。
3965gで生まれ、食べることが大好きな子供だったので、その後も大きな体を維持していました。
母に、僕がどんな子供だったか聞いたのですが、お菓子作りとか、母の化粧品などに興味を持ったり、他の兄弟たちとは違う行動をとっていたようです。また、実家に叔母の置いていったピアノがあり、母が「息子たちの誰かしらピアノを弾けるようになってほしい」という願いがあったみたいで、僕が習うことになり、楽しくレッスンに通っていたみたいです。その後、小学校の課外活動で吹奏楽(トランペット)、中学校でバスケ部と合唱部、高校で合唱部と、たくさん音楽に触れながら成長することができました。

近所の神社にて七五三

―中学時代のバスケ部と合唱部の両立とはすごいですね。「声楽家」を目指し始めたのはいつごろからですか。

子供の時から歌うことは好きだったと記憶しています。歌番組を見ながらテレビの中で歌っている歌手に合わせて歌い、兄から「うるさい!」と、よく怒られていたのを覚えています(笑)また、小学校高学年あたりで、家の中で米良美一さんの『もののけ姫』を大声で歌っていて、兄の家庭教師の先生に「上手いね」と褒められ、その辺りからちょっと「歌手になりたい」と意識していたのかもしれません。
しっかりと、進路を音楽大学に決めたのは高校2年生に進学する時でした。進路希望を出すとき、合唱にのめり込んでいたので、「将来、自分の好きな事、歌う事を仕事にして生活できたら」と考えました。 合唱部に所属していましたが、習っていたピアノはやめていて、普通科の高校に通っていたため、音楽大学を目指すのは両親にとっては寝耳に水だったと思います。
合唱部の顧問の先生に相談し、先生を紹介していただき、そこから声楽家に向けての道が始まりました。

高校の文化祭でミスコンに参加

―普通科の高校から音楽大学に入り、音楽の勉強、恩師や音楽仲間との出会いなど充実した学生時代を過ごしたのではないですか。

学生時代の勉強…正直に申しまして、とても楽しい大学生活を過ごしてしまったので、何を勉強したのかあまり記憶がありません。お恥ずかしい…。友人たちとたくさんお酒を飲んで語り合ったことは覚えています(笑)
声楽家として、自分なりの勉強の仕方や音楽との向き合い方が確立したのは、新国立劇場のオペラ研修所で学んだ3年間だったと思います。大学時代はバリトンの直野資先生のもとで学び、イタリア作品を中心に勉強していました。なので、もちろんイタリアオペラも大好きです!!新国立劇場オペラ研修所に入り、木村俊光所長のもとでツェムリンスキーやヒンデミット、シュトラウスのドイツオペラに触れる機会をいただき、ドイツ作品に大きな興味を持ちました。そこから文化庁の研修先をドイツ・ベルリンにして1年間研鑽をしてまいりました。

ベルリン研修時、恩師のルパート・ドゥスマン氏(右)

―大学時代の楽しい時間やその後の努力は何ものにも代えがたい貴重な経験だと思います。声楽家になってからはどのような努力をしましたか。

声作りです。今までもこれからもずっと、考えて磨いていかなければならないと思っています。
親が与えてくれたこの体、この喉で、生の歌声で、どれだけお客さまに感動していただけるか、これから先もずっとずーっと考えていきたいと思います。

―これからチャレンジしたいことや、どのような役を演じて歌いたいかを教えていただけますか。

レパートリーとしては、今回7月に歌わせていただく東京二期会オペラ劇場『パルジファル』のように、「Jugendlicher Herdentenor (若いヘルデンテノール)」の役を中心に歌っていければと思っていますが、NISSAY OPERA 2019『ヘンゼルとグレーテル』の魔女のようなキャラクターにも挑戦していきたいです。それらを含め、歌って踊れるオペラ歌手になりたいです。

2019年6月 NISSAY OPERA 2019
『ヘンゼルとグレーテル』魔女役
写真提供:日生劇場/撮影:三枝近志

今年1月に、金沢にて、渡辺俊幸先生作曲、アンサンブル金沢の新作オペラ『禅』~ZEN~の鈴木大拙役を歌わせていただきました。その際、新作オペラということで、劇中にミュージカルナンバーもあり、少しではありましたが「華麗な?」私のダンスもお披露目させていただきました。
最近のいろいろなオペラの演出をみても、演出家から歌い手へ求める演技のレベルや技術力は高くなっていると思います。100パーセントの力でそれに応えられる体づくりや演技力を高め、たくさんの役に挑戦していけたらなと思っています。

2022年1月 金沢歌劇座
オペラ『禅』~ZEN~ 鈴木大拙役
写真提供:公益財団法人金沢芸術創造財団/撮影:池田ひらく