2010年2月の『オテロ』デズデモナ役の出演が決まった時、こんな素晴らしい大役を頂けたのならしっかり務めるために楽器である体を作り直さなければ!というステキな口実が出来たので体を一回り大きくし舞台に臨みました。状況や立場が違っても、いつの時代でも変わらない人間の感情、とりわけ『オテロ』では愛情、嫉妬、憎悪などがあちこちで交差する作品でしたが音楽=歌というこちらもどの時代も国境でさえも超えてしまう手段で表現できるチャンスを与えられ舞台に立てたことはとても幸せでした。音楽と役に向き合い、この体に精神と魂をこめて精一杯ホールを響かせて歌うということは壁にぶつかることもありますが、だからこそ楽しくやりがいがあります。本日は、今歌いたい、歌ってみたい歌を私らしく表現してみたいと思い選曲いたしました。皆様のお耳に届きますように・・・これからも大好きな歌をその時の「私らしさ」を大切に歌っていきたいと思います。
2009年10月、東京二期会オペラ劇場で『蝶々夫人』を演じさせて頂き、「誰に何と言われても決して愛を疑わず、信じ続ける」という精神の美しさ、強さを深く感じました。それは日本人が本来持っている魅力なのではないでしょうか……
日本には美しい自然があり、私たちはそこから心の豊かさを得ています。今回、第一部に日本歌曲を、そして第二部のアリアでは『蝶々夫人』とともに團伊玖磨先生の『夕鶴』からつうの最後の別れの歌を選ばせていただいたのも、日本の美しい風景や暮らしの中から生まれた音楽を、日本人として表現し、皆様にその魅力をお伝えしたいと思ったからです。日本の旋律は時を越えて懐かしさや温かさを感じさせてくれます。
いつまでも、日本の心を忘れず歌い継いでいきたいと思います。