このオペラは、ベルリン留学中に初めて見ました。オペラの序曲は聴いたことがあったのですが、フィガロのアクロバティックなアリア、そしてお客さんのブラボーの嵐にすっかり打ちのめされ、帰りにそのまま楽器屋に直行してヴォーカルスコアを買ったことを覚えています。それ以来このアリアをいろいろなところで歌ってきました。コンサートやコンクールの舞台、デパートの催事場、学校の体育館、集会所、体調のいい時も、ぎっくり腰の時も、いつもこの曲と一緒にいました。テンポも速く、早口で舌を噛みそうになりますし、高い声で頭がクラクラすることもありますが、何歳になっても歌っていきたい曲です。今日も命がけで歌います。 大沼 徹 |
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新国立劇場オペラ研修所時代にバリトン仲間が歌っていたこの曲。映画音楽のような美しいメロディーと和声に魅せられて自分も挑戦したものの、全く歯が立たず落ち込んでばかりいました。今でも課題は山ほどありますが、歌い込むほどにこの曲の魅力を感じています。派手さはありませんが、作り込まずに等身大で歌える部分が気に入っています。この記念すべきコンサートに出演させて頂けることに心より感謝して歌わせていただきます。 与那城 敬 |
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2008年9月 東京二期会オペラ劇場 |
二期会60周年記念ゴールデンコンサート「バリトン、バスの日」に出演できることを大変光栄に思います。学生の頃から漠然と、ロシア語のオペラにはバスのための素晴らしい作品が沢山ある、と聞かされていました。そして5年前、二期会オペラ公演でこの美しい曲と出会いました。東京文化会館の二階下手客席で歌うという珍しい体験付きでした。以来、<恋は年齢を問わぬもの。私は隠さない、彼女を愛している。曇り空の太陽のように私の前に現れ、若さと幸せを与えてくれた>と歌ってきました。私事ですが今年は前厄。来年も再来年もヤクは落さず引き受け、その先の人生の肥やしにしていくつもりです。チャイコフスキーの機嫌を損ねないよう、「選ばれた60人」の名に恥じないよう精一杯務めます。 斉木 健詞 |
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バリトン、バスの日に出演できる喜びを感じています。プログラムに目を通すと、バスの曲以外はどれも一度は歌った、もしくは勉強した曲ばかりです。高校生のとき初めて学んだ曲、大事な試験で歌った曲、今もプログラムの要としている曲…どの作品にもそれぞれの思い出があります。しかもそれを二期会を代表する皆さんが演奏しあう(試合う!)のです。お客様以上にステージ裏は熱くなること必至ですね。自分の歌うヴァランタンがこの会に相応しいか未だ不安ですが、この会のこの面々を前に歌うことで開かれる扉が必ずあろう…そう信じての挑戦の選曲であります。 宮本 益光 |
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2008年2月 東京二期会オペラ劇場 |
「お前らごときが名誉だと?名誉で腹が膨れるか?Noだ!名誉でひじが治るのか?No! 名誉は単なる言葉でしかない。そんなものわしには全く必要ないぞ!こそ泥野郎!出ていけ!」 以前、『ファルスタッフ』の公演にてベルントヴァイクルさんのカヴァーを務めさせて頂きました。直接彼からファルスタッフについて様々アドバイス頂いた私の思い出のアリアです。バリトンであればきっと一度は夢見るこの役。僕もあと10年後いや20年後、まさしくファルスタッフと同じような年齢の時にこの役を演じることができればと今からワクワクしています。ああ!なんと長い道のりだ!そんな年齢まで現役を貫きたい。燃え続けます。 泉 良平 |
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2006年9月 東京二期会オペラ劇場 |
2006年にドイツでの生活を終え、日本へ帰国した帰国記念リサイタルで歌ったのがこのメーリケ歌曲集からの<戒めに>と<あばよ>だった。あれから7年の時間が流れた。その間に私が心から愛する読売巨人軍は2回の日本一に輝いた。特に昨年の最下位からの完全優勝は記憶に新しい。来年はどんな野球を見せて くれるのか、今年入団した菅野はプロで十分活躍するのか、楽しみは尽きない。キャプテンとして阿部は今年も攻守でチームを引っ張って行ってくれることだろう。夢は膨らむばかりだ。この二期会を代表するバス、バリトンの方々の中で自分のポジションは巨人の阿部や坂本のような位置ではない。あくまでも自分は矢野や古城のポジションを目指したいと思っている。レギュラーでなくても、代打や守備で輝きを見せてくれる職人のような選手。自分もそんな歌手になりたい。もうすぐペナントレースが始まる。“野球というスポーツは人生そのものだ”と長嶋茂雄は語った。私にとっても野球は人生、そしてこれからも巨人の優勝を願いつつ歌っていきたいと思う。こんな馬鹿な歌手がひとりくらいいてもいいだろう…今年も東京ドームが我が家だ。『メーリケ歌曲集』と巨人、全く関係ない。ただ歌いたいから歌うのだ。 萩原 潤 |
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2009年2月 東京二期会オペラ劇場 |
自作の詩による『さすらう若人のうた』はマーラー23歳の時の作品である。僕が初めて、この曲を歌わせていただいたのが22歳だった。その時のプログラムに次のような自分の言葉が記されていた。 青戸 知 |
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ザルツブルクのミラベル宮殿前バス停。いつ行っても白い化粧鬘をかぶったモーツァルト(チョコレート)の看板が微笑んでいます。そこから黄色いバスに乗って25分、ほとんど毎日レッスンに通った留学生活でした。他のことは何も考えず歌のことだけに集中できた宝物のような時間でした。そんな中出逢った1曲です。当時は歌いづらいし地味だし・・・と敬遠していましたが、そろそろこの曲の世界を表現できるのではないかと思い選びました。華やかなガラ・コンサートには似つかわしくない曲かも知れません。しかしとてもいい曲なのです!3月16日(土)津田ホール。お客様と出演者合わせて500余名で、素敵な時間を過ごすことが楽しみでなりません。 山下 浩司 |
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2009年7月 佐渡 裕 芸術監督プロデュースオペラ2009(東京公演) |
人が迎える60年・・・過去の経験を振り返り、自分自身の存在を見つめ直すキッカケとなる通過点、そしてそれまで過ごした日々はこれからの人生へスタートをする為の準備期間・・・と経験少ない私ですが考えを巡らしてしまいます。二期会が60周年を迎えたことは、私たち歌手達に未来への新たな使命を与えられたのかも知れません。この記念すべきコンサートに選んだ曲は私自身、歌手人生の中で通過した1つの点で歌った曲を歌わせて頂きます。私が大学4年間の勉強の締めくくりに歌った曲です。あれから自分がどの様に成長してきたのか分かりませんが、今日のコンサートが皆さまの記憶に残る1つのモニュメントになるよう心を込めて歌わせて頂きます。 成田 博之 |
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文化庁オペラ研修所第9期生の終了公演、私が演じたのが『ドン・ジョヴァンニ』のレポレッロでした。二期会でのオペラデビューもレポレッロでした。それ以来、何度もこの役を演じるチャンスに恵まれてまいりました。現時点で振り返ってみると、わたしはレポレッロという役に育てられて来たような気さえいたします。ドン・ジョヴァンニの従者というだけではなく、ジョヴァンニのキャラクターを成立させるのに必要不可欠な重要な役どころだと自負し、毎回このレポレッロという役に向き合ってまいりました。この度、二期会創立60周年記念コンサートに出演させて頂くにあたり、歌わせて頂くのは「カタログの歌」しかないと、選曲させて頂きました。 久保 和範 |
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2012年9月 東京二期会オペラ劇場・二期会創立60周年記念 |
この曲はもともとオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」の第1幕にグリエルモが歌うために作られたものですが、今ではもっと小規模なアリアに差し替えられており、このアリアは演奏会用の曲として独立して演奏されます。京都での学生時代に恩師である現関西二期会理事長の蔵田裕行先生からレッスンに持ってくるように言われ、1週間後のレッスンに意気揚々と持って行ったのですが、歌いだしてすぐに止められ、「あんなぁ、この曲はイタリア語やで」・・・。私が用意した楽譜には上段にしっかりドイツ語、下段に小さなイタリア語の歌詞が書かれていたので、すっかりドイツ語の歌だと思い込んで勉強していたという、恥ずかしくも懐かしい思い出の曲です。 黒田 博 |
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2007年2月 東京二期会オペラ劇場 |
『セビリャの理髪師』の「陰口はそよ風のように」を聴いた最初の記憶は、TVで見たニューヨーク・メトロポリタン歌劇場公演でした。30年以上前の経験です。背の高いバジリオで、このアリアを、椅子などを軽々と踏み越えながら歌う姿が目に焼き付いています。アメリカ人のバス歌手ジョルジョ・トッツィでし た。あのミュージカルの名作映画「南太平洋」で“魅惑の宵”を吹き替えで歌っているのもトッツィです。ハンブルク国立歌劇場の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の公演で、ハンス・ザックスを歌った記録も残っています。私の大好きな「役」「曲」をトッツィは歌っていました。2011年6月4日に88才で亡くなっていたことを、今夜知りました。 池田 直樹 |
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2000年11月 新国立劇場/日本オペラ振興会 藤原歌劇団 |
このアリアに関しましては、実に様々な思い出があります。まずバリトンにとっては誰しも最初に挑戦するイタリアのオペラアリアです。とてつもなく難しいもので、学生のころは急な坂を登り続けている感じで、途中で必ず挫折してしまいました。やがて歌えるようになると今度は、若すぎるから老けた年配のイメージで歌いなさいと言われました。(そんなの無理です。)そのうち前半と後半の歌詞が混在してしまったりで、なかなかまともに歌えたためしがありません。さて、今はどうでしょうか?今は年下の男性をイメージしてちょうど良くなりました(笑) 大島 幾雄 |
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非常に魅力的であるけれども、群を抜いて長大かつその人間的魅力を表現する上で超難役といわれるハンス・ザックス役ですが、私にとって、このオペラはとても縁が深いのです。ヨーロッパから帰国して初めてNHKニューイヤー・オペラコンサートに出場した際に、最終演説「マイスター達を軽蔑してはならない」を歌って以来、その後も、ニューイヤーでは、この「リラのモノローグ」をはじめ「迷妄のモノローグ」を歌わせて頂きました。そしてとうとう全曲通して演じる事が出来たのは、二期会50周年記念公演(ベルギー王立モネ劇場との提携公演)でした。ハンス・ザックスは、男やもめでありながら、卓越した詩人として周囲から一目置かれている靴屋の親方で、金細工師で同じマイスタージンガー仲間であるポーグナーのうら若くも美しい娘エファを可愛がっていましたが、そのエファが突如現れた若い騎士ヴァルターに惹かれている事をいち早く察知し、エファへの求婚者を決める歌合戦に挑戦するに際し、マイスタージンガー資格試験に合格するように手助けすることによって、彼らを晴れて結婚できるようにしてやります。騎士ヴァルターの詩が規則に合わない部分が在るにせよ優れた詩人であることを評価できるのは、ザックス自身が独創性を見抜く事の出来る真の芸術家であるからこそです。五感をほぐすリラの香りの中でザックスがエファへの想いを断ち切り、騎士ヴァルターの詩人と しての才能を正当に評価することによって、エファとの仲を応援する気になるという、このオペラの物語にとって大きな転換点となる、非常に人間的な愛を感じさせるモノローグ。二期会創立60周年を迎えた感謝とさらなる未来への祝福の想いを込めて歌います。 多田羅 迪夫 |
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