世代のトップレベルの実力をもった才能が、文化庁の新進芸術家会芸研修制度により1年以上の海外研修を経て、東京に集結!その成果を一同に発表する、一夜限りのスペシャルなオペラ・ガラ。
その出演者をリレー・インタビューでご紹介してまいります!
2番目は、メゾソプラノ上島 緑。
長野県出身の上島は、イタリアのクレモナを研修の地に選び、現在もクレモナのモンテヴェルディ音楽院に在籍中。イタリアでは、バロック音楽に魅了され、ヨーロッパ・デビューもグアルディアグレーレ音楽祭でのパーセル『ディドとエネアス』ディドでした。
そんな上島が今回の演奏会で選んだのは、なんとチャイコフスキー『オルレアンの少女』よりジャンヌ・ダルクのアリア。本番を前に話を聞きました。
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メゾソプラノ上島 緑(かみしま みどり)
――オペラ歌手(声楽家)になろうと決意したのはいつでしたか?
上島: 小学6年生のときです。
――子どものころにオペラとの出会いがあったのですね!どんなきっかけだったのでしょうか?
上島: 私の故郷は北アルプスの麓、信州は松本です。毎夏松本で行われるサイトウ・キネンフェスティバル(現:セイジ・オザワ松本フェスティバル)に於いて、小学6年生の時、小澤征爾指揮『ファウストの劫罰』に児童合唱として参加しました。
それまでは男の子に混じってマウンテンバイク、ミニ四駆に熱中していた子供でしたが、オーディションを機に初めて「オペラ」というものを体験しました。外国人の歌い手やスタッフ、ダンサー、見た事のない装置や斬新な演出に衝撃と興奮を覚えた事は、今も忘れられない思い出です。
現在はイタリアに住み、本場のオペラを観る機会がありますが、なかなかあの経験を超えるオペラに出会う事はできません。
――生まれ故郷で受けた体験がすべてのスタートになっているのですね。その後、文化庁の新進芸術家海外研修制度を利用しようとしたきっかけは何でしたか?
上島: 私の家庭は母が音楽、父が医療関係の仕事をしており、音楽に理解のある比較的裕福な家庭で過ごしました。イタリアへ留学する際も当たり前のように私費留学をさせてくれ、ちょうど留学して5年が経とうかという時、今まで何一つ私の音楽家としての素質に否定も肯定もせず静かに応援してくれていた家族の為にも文化庁の海外研修制度に挑戦しようと思いました。結果は有難い事に一発で合格し、私の音楽家としての大きな自信になりました。
――文化庁の海外研修制度への挑戦が、独立への大きな一歩となったのですね。さて、「明日を担う音楽家による特別演奏会」ではチャイコフスキー『オルレアンの少女』を選びました。この選曲理由を教えてください。
上島: 今回はソロ曲にジャンヌ・ダルクを選びました。フランスのヒロイン的存在、救世主として有名なジャンヌ・ダルクは、百年戦争に於いてオルレアンの解放に貢献、シャルル7世の戴冠を実現させますが、コンピエーニュの戦いで捕虜となり、魔女裁判の結果1431年19歳という若さで火刑台に処されました。
今は研修を終え、イタリアとフランスの国境に位置するヨーロッパアルプス「モンブラン」の麓で生活しています。アルプスの少女ハイジの世界を少しモダンにした感じとでも言いましょうか。今回歌うアリアに出てくる、ジャンヌが故郷ドンレミ村を去る場面で歌われる情景そのものを映し出したような町です。「居心地が良く、平和で明るい谷。ごめんなさい」とジャンヌが故郷に別れを告げる全ての歌詞には、強く心揺さぶられるものがあります。それは今生活する環境そのものが訴えかけるメッセージ、そして私の故郷信州の景色とが重なった特別なインスピレーションだと理解しました。オペラを演じる上で、役の心情が自然に解る事、それは私にそれを歌うべきだと言われているような感覚になります。
――研修の成果だけでなく、上島さんのこれまで歩んでこられた風景がすべて重なる1曲ということですね。演奏会に向けての意気込みをお願いします。
上島: 今回は憧れの東京オペラシティにて、角田マエストロと東京フィルハーモニーの皆さんとの共演に胸が高鳴っています。この演奏会の為に選んだ曲目を、精一杯歌わせていただきます。
――皆様、ぜひご期待ください! では、これから海外研修を目指す、未来の歌手の人たちに向けてもメッセージをお願いします。
上島: 私何ぞが言うのも僭越ですが、「苦労は買ってでもしろ」でしょうか。
人生で大きな壁にぶつかり、生きている事さえも嫌になったそんな時、あまりに辛くて師匠に弱音を吐いてしまった事があります。その時師匠から「若いうちはたくさん苦労をしなさい」それでいいんだというような晴れやかな顔で答えてもらった事を思い出します。若いうちに苦労はして良いんだ。大事なのは、それを乗り越えてどう自分が変わったかが大切なのだと思いました。私ももう若いとは言っていられない歳になりました。今までのたくさんの苦労は大きな財産となって人生に、歌に生かされていきます。自分にしか歌えない歌を歌ってください。
――最後に、歌の道、芸術の道を歩んでいくにあたって、上島さんご自身に向けて、座右の銘があれば、教えてください。
上島: 「死ぬまで磨き続けられる楽器でいたい」です。
研修中は、ヴァイオリンの町として有名なクレモナで勉強をしました。ストラディヴァリウスを身近に接する事のできる環境は、300年かけて名器となっていったように、歌い手も限りある人生の中で常に進化し磨かれる楽器でありたいと思わせてくれました。
――ありがとうございました。
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上島 緑は、『音楽の友』1月号(2023年12月発売)の「フレッシュ・アーティスト・ファイル」でもインタビューを受けていますので、ぜひそちらもご覧ください!
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音楽の友 2024年1月号 - 音楽之友社
公演チラシ(PDF) | ■■■ 公演情報 ■■■ 新進芸術家海外研修制度の成果 明日を担う音楽家による特別演奏会 日時:2024年1月29日(月) 19:00開演(18:30開場) 会場:東京オペラシティ コンサートホール 【アクセス】 (都営新宿線直通・京王新線「初台駅」東口より徒歩5分) 料金:(全席指定・税込) S席¥4,000、A席¥3,000、B席¥2,000、学生席¥1,500 《チケット発売中》 出演: (ソプラノ)平野柚香、保科瑠衣 (メゾソプラノ)上島 緑 (バリトン)井上大聞、内山建人、野町知弘 |
・明日を担う音楽家による特別演奏会 - 東京二期会
(主催:公益財団法人東京二期会)
●お問合せ・ご予約:二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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*やむを得ぬ事情により出演者・演奏内容が一部変更になる場合がございますので予めご了承下さい