第1回は、スズキ役で二期会デビューを果たす新星メゾソプラノ藤井麻美(ふじい あさみ)です。
先日の日生劇場『ヘンゼルとグレーテル』で母親役を好演したばかり。その歌声を聴いた人も多いことでしょう。
藤井は新国立劇場のオペラ研修所を修了した後、文化庁新進芸術家海外研修制度によりイタリア・ペーザロで研鑽を積み、その地ですでにスズキ役にてヨーロッパデビューを果たしている逸材ですが、東京二期会の公演が、この役を目標とするきっかけとなったと語っています。
――日生劇場『ヘンゼルとグレーテル』お疲れさまでした!「母」役はいかがでしたか?
藤井: ありがとうございます。
今回日生劇場の素晴らしいプロダクションの中で歌わせていただけた事にまず感謝をしております。私の歌わせていただきました母役は、とても魅力的でやり甲斐のある役どころでした。
このオペラの中で母が舞台上にいる時間は決して長くはありませんが、その中に喜怒哀楽全ての感情が詰め込まれています。
1幕で母は仕事を手伝わなかった子供達を厳しく叱りつける場面があります。しかし子供達が森へ行った後には、貧乏な生活故に子供達を叱ってしまう辛さを1人語る場面があります。本当は子供達を愛しているのです。この怒りから愛情を表す部分が最も難しく、しかし魅力的な部分でもありました。
また、この日生劇場のプロダクションは中学生、高校生の観賞教室という役割もあります。中高生の生の反応を感じられたことも良い刺激となりました。
日生劇場『ヘンゼルとグレーテル』より 写真左が母役の藤井麻美
(写真提供:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]/撮影:三枝近志)
——そして、10月『蝶々夫人』スズキ役で二期会公演にデビューします。この役はイタリアでも歌ってきて、特別な思い入れもあるのではないかと思いますが、今の藤井さんにとって「スズキ」役とは?
藤井: 私にとってスズキ役は「ずっと憧れていた役」でした。
学生の頃、初めて自分でチケットを購入し観たオペラが東京二期会の『蝶々夫人』でした。美しく哀しい世界に当時の私は釘付けになりました。
このときのスズキ役は永井和子先生でした。ふと気付くと、私はいつもスズキの動作を目で追っており、幕切れ後もこの後に蝶々さんの姿を見たスズキはどんな涙を流すのだろう、とストーリーの続きを考え自分も涙しました。スズキ役が私の憧れの役となった瞬間でした。 絶対にいつかこの役をやりたい!その為にはオペラを勉強しなくては!と強く思い、新国立劇場のオペラ研修所を目指すきっかけともなりました。
そして、昨年イタリアでの国際コンクールの副賞、また劇場オーディションにもチャレンジし、スズキ役を何度か歌わせていただく機会に恵まれました。
日本人である私がスズキ役をどのように表現するか寝ても覚めても考えていました。イタリアの劇場の皆さまは明るく温かく、日本から来たメゾソプラノを迎え入れて下さいました。 稽古はタイトなスケジュールでしたが、マエストロ、演出家、歌手とでディスカッションをしながらより良いものを造り上げていく、という刺激的な現場でした。
特別な役であるスズキを、今回二期会デビューとして歌わせていただけることに感謝の気持ちでおります。
10月まで役を深めて、精一杯スズキとして生きたいと思っております。
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▼『蝶々夫人』の本公演情報はこちらから 《チケット発売中!》
・〈ザクセン州立歌劇場とデンマーク王立歌劇場との共同制作公演〉2019年10月公演 G.プッチーニ『蝶々夫人』 - 東京二期会オペラ劇場
2019年10月3日(木)18:30、4日(金)14:00、5日(土)14:00、6日(日)14:00 東京文化会館 大ホール
2019年10月13日(日)15:00 よこすか芸術劇場
指揮:アンドレア・バッティストーニ/演出:宮本亜門/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
〈主催〉文化庁、公益財団法人東京二期会/〈制作〉公益財団法人東京二期会
●本公演のお問合せ・チケットのご予約は
二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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