昨年、好評を得た『ばらの騎士』に続く、共同制作第2弾。びわ湖ホール・神奈川県民ホール・東京二期会、日本オペラ連盟共同制作『トゥーランドット』。
さまざまな所属オペラ団体からキャスト陣が集まり、びわ湖ホール、神奈川県民ホールで、それぞれ2回の公演を打つスケールの大きいプロジェクトです。指揮は、びわ湖ホール芸術監督・沼尻竜典、演出は粟國淳。
まず3月14日に幕を開けたびわ湖ホール公演から、その熱気が伝えられました(びわ湖ホールではチケット予定枚数終了)。続く神奈川県民ホール公演も、首都圏からも多くの聴衆が駆けつけ、最高の盛り上がりを見せた公演でした。
序曲が終わると、舞台上には巨大な歯車の中で、唯々諾々、黙々と働く民衆たち。強圧的な皇帝と冷徹なトゥーランドット姫の従者・役人たちは、管をつけて、自らの思考が停止したかのような条件反射的に動きます。その動きはどこかぎこちなく、まるでロボットのよう。ただ一人リュウだけが、心の命じるままに自由に生きます。その境遇は、傍からは決して幸福とはいわれないかも知れません。しかし亡命中のタタール族のティムール王にだけ、リュウの美しさが見えるのです。
どこかユーモラスな旋律、故郷を懐かしむ歌詞、悲劇の中でほっと人間味を見せるピン・パン・ポン。3月15日のびわ湖、28日の神奈川県民ホールの舞台では、びわ湖声楽アンサンブルの若手歌手(ピン迎肇聡、パン清水徹太郎、ポン二塚直紀)が起用されました。
トゥーランドット姫は、横山恵子と並河寿美。高度に張り詰めた存在感、残酷さ、高貴な美しさで、
粟國演出の核となりました。この役はプッチーニオペラの中でも格別な存在ですが、非常に深い表現を秘めた歌声に、聴く人は心動かされたことでしょう。
左:トゥーランドット姫=並河寿美 右:リュウ=高橋薫子
総勢70名の合唱。ステージ上でも、裏でも出番が多い作品ですが、透明な高音、非常に分厚い響きで緊張を保ち、クオリティーの高さを示しました。
金属的で硬質な舞台装置は、トゥーランドット姫の閉ざされた城砦でもあり、囚われた心にも見えます。
照明は、劇中の重要な場面で、音楽とともに変容し、緊張感を高めてゆきます。トゥーランドット姫に挑むカラフ役は、福井敬と水口聡。気迫に満ちた王子カラフの熱唱、演技は、評論家からも注目され、各紙で絶賛されました。
皇帝アルトゥム(田口興輔)が君臨する壮大な皇国。
権力、冨、愛、いずれもが現代まで、解き明かされることのない欲望ではないでしょうか。
トゥーランドット姫の謎かけが、続いているかのような幕切れです。
写真提供:びわ湖ホール
(写真をクリックすると拡大してご覧いただけます)
▼出演者などの詳細はこちらをご覧ください。
共催オペラ公演「トゥーランドット」- 公演記録|東京二期会