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夏の始まりを彩った『ホフマン物語』。歌手が輝いた最高の舞台!

フランスの名匠ミシェル・プラッソンの指揮、粟國 淳の幻想的な演出、大きな盛り上がりを見せた、オッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』。
タイトルロールのホフマン役、福井 敬、樋口達哉の熱演に、若手歌手も大奮闘。
多くの方のご来場、誠にありがとうございました。
ホフマンと3人の女性の恋物語、と一言では語りつくせない、次々と繰り出される魔法のようなシーン、その余韻がいつまでも消えませんでした。
舞台写真とともに、この素晴らしい公演を振り返ります。
写真撮影:三枝近志(☆…7月31日・8月3日組、◆…8月1日・4日組)
会場:新国立劇場オペラパレス
<舞台写真はクリックで拡大表示します>

ホフマン(福井 敬)とニクラウス(加納悦子)。「ホフマンは女の人に溺れ、酒に溺れ、ちっとも芸術に身が入らない。」そんなホフマンを何とかして芸術の道に連れ戻そうとする芸術の女神ミューズが、ニクラウスに姿を変えて現れる。青年貴族のようなはつらつとした身のこなしに、思わず見惚れ、聴き惚れ。


ホフマン(樋口達哉)とリンドルフ(大沼 徹)の対決。
ふてぶてしい態度のリンドルフ、「飲み代は払う性質でね、スカンピン殿」。
字幕=本谷麻子=も素晴らしく、作品の理解を助けてくれました。


ホフマンの最初の恋人オランピア(安井陽子)。本当に人形のような動きと、超人的な高音のパッセージ。でも超絶技巧の機械ではなくて、あたたかさときらめきを感じさせるのは、安井ならではの歌唱力。


スパランツァーニ(右=羽山晃生)と、コシュニーユ(左=新津耕平)が見守る中、歌を止めないオランピア(佐藤優子)。佐藤は、今回が二期会オペラデビュー。


「光れ!ダイヤモンド」ダペルトゥット(大沼 徹)は、憎らしい悪魔役を堂々と演じた。


第2幕「あなたの影がほしいの、どうしてもほしいの」と迫るジュリエッタ(菊地美奈)。


光り輝くダイヤモンドと引き換えに、ホフマンを籠絡する妖艶な美女ジュリエッタ(佐々木典子)。


影を取られておののくホフマン。マジックミラーを使った演出。不思議でした!
「ホフマンあなたが好きよ、でもさからえないわ、口づけひとつでダイヤモンドが手に入るのよ」


病のために、歌ったら死ぬ、というアントニア(木下美穂子)。短い命と知って、音楽への情熱を燃え上がらせる激しさに、思わず引き込まれてしまいます。


歌姫ステラからホフマンへの手紙をリンドルフに売り渡す、召使アンドレと、アントニアの屋敷で芸術家を気取る老いた使用人フランツは一人二役。フランス風の皮肉も効いて巧みな芝居が注目された田中健晴。


高橋絵理のアントニア。一年前の『パリアッチ(道化師)』ネッダとまた違う一面を見事に開花させました。情感あふれる繊細な音楽性、声の美しさが、きらきらした瞬間。
そしてアントニアの母の声(7/31・8/3=与田朝子、8/1・4=小林紗季子)も、姿は見せない役ですが、その声の存在は大きい。2階席の下手のバルコニーで歌っているのですが、舞台上と一体となって、すばらしい効果をあげました。


悪魔(小森輝彦)がヴァイオリンを弾きながら、「歌え!」と、囁(ささや)く瞬間、額縁の中の優しい母の面差しは、死神に変わる。この仕掛けも見事でした。


命のない人形だったオランピア、生きたまま去ったジュリエッタ、そして死んでしまったアントニア。でも3人は一人だったのだ! 歌姫ステラ!!!
その美しい登場には客席からため息が。ステラを演じたのは、ダンサーの今村たまえ。

プラッソンは今秋80歳。酷暑の東京に顔をしかめながらも、ユーモアあふれるマエストロ。連日、集中した稽古を重ね、オーケストラ、歌手共に素晴らしいオペラの舞台を作りあげました。
カーテンコール(撮影:堀 衛)




帆かけ舟

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