5月25日(土)、26日(日)めぐろパーシモンホール 大ホールにて、鈴木秀美指揮、中村蓉演出によりヘンデル『デイダミーア』を上演します。『デイダミーア』は、ヘンデル最後のオペラ。最後といっても、翌年には名曲「メサイア」を作曲、演奏しており、まさにヘンデル最盛期に作曲された作品のひとつなのです。
『デイダミーア』の舞台は古代ギリシア神話の世界。中でももっとも知られているキャラクターは、アキッレ、すなわちアキレウス(アキレス)ではないでしょうか。不死身の英雄で、俊足、卓越した戦闘能力で知られていますが、トロイア戦争時、唯一の弱点である踵を狙われ、戦死します。「アキレス腱」の元となった物語です。
彼には、デーイダメイア(デイダミーア)という妻があり、ネオプレトモス(ピュロス)という息子がいました。息子もまた戦争にいく運命にあります。
このオペラは、その英雄アキッレの若かりし頃、妻デイダミーアと出会った頃の物語です。 「この子はやがてトロイの戦いにおいて死ぬ」との神託を受けていたアキッレ。アキッレの母親が、その運命から息子を匿うため、女性としてスキューロス島に身を隠させます。アキッレはそこでデイダミーアと出会います。
『デイダミーア』キャスト・インタビュー第1回は、そのアキッレ役を演じる 栗本萌 と 渡辺智美 に話を聞きました。
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アキッレ役 栗本 萌(くりもと もえ)5/25(土)出演
――二期会公演デビューおめでとうございます。
栗本萌・渡辺智美: ありがとうございます!たいへん光栄に存じます。
――アキッレは、どのような役ですか?
栗本: アキッレは、古代ギリシアの英雄アキレウスのことです。戦争で命を落とすという預言を受け、母はそれを回避するため女装をさせて島に匿います。
渡辺: タイトルロールであるデイダミーアの恋人です。
栗本: 「ピュラ」という名前でドレスを着飾っているにもかかわらず、非常に奔放で、狩りが大好き。美しい装飾品よりも武器の虜。素デイダミーアの心配をよそに子どもじみた嫉妬で彼女を苦しめます。
渡辺: デイダミーアのことを心から愛し、女性の姿での生活を受け入れてはいるものの――ほんとうは嫌々でしょうが(笑)、やはり心は男性らしいというか…
栗本: 活発で自分勝手(笑!)な子どもっぽい性格が音楽にも良く表れています。
渡辺: 狩りが大好きなアキッレは、ついつい、男性らしい仕草が随所で出てしまうんですよね。みなさまにはそんな愛すべきアキッレの姿を、たくさん見つけていただければと思います。
――アキッレ役なら「この1曲!」という聴きどころを教えてください。
栗本・渡辺: 第3幕の「Ai Greci questa spada(ギリシアのためにこの剣は)」です!
――どのような内容ですか?
栗本: アキッレを探しにきていたウリッセ(オデュッセウス)が、女性達に美しい装飾品を贈ります。が、その中に立派な武具を潜ませています。まんまと武具に食い付いたピュラ、そこへ突然鳴り響く襲撃音に反応し「僕が王国を守る!」と血気盛んに歌い上げます。
トロイに対する怒りと、戦地で活躍できる喜びを胸に猛進するアキッレの姿は、皆を奮い立たせる魅力があります。音形の節々に彼の自信に満ちたエネルギーが溢れていて、後にギリシアの英雄となる彼が、自身の生きる道を自覚した瞬間でもあると思います。
渡辺: 本作品にはソプラノの役が3役登場しますが(デイダミーア、アキッレ、ネレーア)、私にとっては、3役の中でこの「アキッレ」という役を歌いたい!と強く感じた、思い入れの強い1曲でもあります。
やはりバロック・オペラ作品の見どころといえば、アジリタ(本人注:メリスマとも呼ばれる、歌詞を伴わずに細かく音符を連ねる表現技法)と、再現部でのバリエーション(変奏)ではないでしょうか。その両方の魅力がこの曲には詰まっています。
歌手の技量の見せ所でもありますし、聴いていただくキャストによって全く違う演奏を楽しんでいただけると思います。ぜひ、両組の演奏を聞き比べていただき、ご自身の好きなポイントを発見していただければ嬉しいです。
アキッレ役 渡辺智美(わたなべ ともみ)5/26(日)出演
――ダブル競演を楽しみにしていただきましょう。二人は二期会オペラ研修所の同期ですね。お互いの印象をお聞かせください。
栗本: はい、同期の渡辺智美さん、あえて《かぴちゃん》と呼ばせていただきます(笑)。
研修所時代は、なぜか同じ役の、同じ場面を課題に与えられることが多く…今回もまさかのダブルキャスト!運命を感じざるを得ません!
渡辺: 栗本萌さん、あえて《萌ちゃん》と呼ばせてください(笑)。
研修所では一年で3つのオペラ作品に取り組むのですが、なんと萌ちゃんとはそのうち2作品で同じ役を演じたんです!
栗本: かぴちゃんは、とにかくしっかり者で、頼れるお姉さん的存在なのですが、普段はとても「ゆるかわ」な雰囲気で一緒に居て癒されます……。美しく柔らかな響きの歌声で、どんなアキッレを演じられるのか今からとても楽しみです。
渡辺: 1年間という長いようで短いマスタークラス生活の中で、萌ちゃんとは大半の時間を共に過ごしましたし、時に悩みを打ち明けながら切磋琢磨してきました。
萌ちゃんの役作りはとっても緻密で繊細で、いつも勉強になりますし、舞台の上ではとてもしっかり者なんです。でも、舞台を降りた萌ちゃんにはおっとりとしている部分もあり、そのギャップに日々癒されています(笑)。
この公演に携わるきっかけともなった研修所でたくさんの思い出がある萌ちゃんと、また同じ役を演じることができてとっても嬉しいです。研修所時代はコロナ禍真っ只中で食事もままならなかったので、この公演の稽古期間で萌ちゃんとたくさんご飯を食べに行くことも、私の目標の一つでもあります。
――気兼ねなく相談し合い、リラックスし合い、切磋琢磨して創りあげることができるのは、二期会ニューウェーブ・オペラ劇場ならではですね。最後に、それぞれの本番にかける意気込みをお願いします。
栗本: バロック・オペラと聞くと、物語が難しかったり、耳馴染みの無い音楽で躊躇される方もいらっしゃるかもしれませんが、たとえ時代背景をご存知なくとも、十分にお楽しみいただける物語です。自由奔放で幼稚なアキッレが、ギリシアの英雄へと成長していく過程を演じられたらと思っております。
今作が二期会オペラ公演のデビューとなります。新緑の5月、私達もフレッシュな気持ちで、最後まで挑戦を諦めず突き進んで行きたいと思います。皆様のご来場お待ち致しております!
渡辺: この公演に興味を持ち、インタビューを最後までお読みいただきありがとうございます。
まだまだ駆け出しの私たちではありますが、ぜひ本公演に足をお運びいただき、漲るパワーを感じていただけたらと思います。
入所した時から目標であった二期会ニューウェーブ・オペラ劇場公演の舞台なので、お客様に「渡辺にはこんなヘンデル作品も歌わせたい!」と思っていただけるような舞台を目指して精進していきます。ぜひ応援お願いいたします!!
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▼『デイダミーア』公演情報ページはこちら
2024年5月公演 G.F.ヘンデル『デイダミーア』 - 二期会ニューウェーブ・オペラ劇場
2024年5月25日(土)17:00、26日(日)14:00 めぐろパーシモンホール 大ホール
指揮:鈴木秀美/演出:中村 蓉/管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ
▼アキッラ役の二人は、4/23(火)開催のプレイベント「鈴木秀美のヘンデル『デイダミーア』プレトーク&コンサート」にも出演!
・鈴木秀美のヘンデル『デイダミーア』プレトーク&コンサート - 東京二期会
2024年4月23日(火)19:00 めぐろパーシモンホール 小ホール
●お問合せ・ご予約:二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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