開幕迫る 5月ヘンデル『アルチーナ』公演~ニューウェーブ・キャスト・インタビュー[4]
~オロンテ役 市川浩平、前川健生

アルチーナの島を守る武将オロンテ。アルチーナの妹モルガーナの恋人です。しかし、モルガーナは島にやってきたリッチャルドという青年(実はルッジェーロを探すために男装したブラダマンテ)に心を奪われます。
魔女アルチーナと騎士ルッジェーロ、婚約者ブラダマンテの三角関係がこのオペラのメイン・ストーリーとすれば、モルガーナとオロンテのカップルはサブ・ストーリーとして展開し、物語や人物相関を豊かなものにしています。「ちょうどモーツァルト『魔笛』でいうところのパパゲーノとパパゲーナのような存在ですね」と、演出のエヴァ・ブッフマン。

本公演のオロンテ役には、2016年イタリア声楽コンコルソでテノール大賞を受賞し、『ダナエの愛』『トロヴァトーレ』『ノルマ』等ですでに多くの舞台を踏んできている前川健生(20日)と、イタリア・ミラノで学んだ後、二期会オペラ研修所を首席修了、今回がデビュー公演となる市川浩平(19日)の二人の気鋭のテノールが登場します!

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――オロンテ役はどんな役ですか?

市川: 肩書きは武将で強そうですが、中身は女々しくて未練がましい・・・でも実際の男ってそういうものですよね(笑)腕力だけはありますがプライドが高くウジウジしていてデリケートなのが男です!
このオペラにおいてオロンテに求められているのは、理想の「漢」ではなく、現実に存在する「男」かな、と考えています。


市川浩平

――オロンテのアリアは3曲ありますが、あえて1曲あげるとすれば?

前川: 第2幕の“È un folle, un vile affetto(私の心を打ち負かすものは)”です。
オロンテは恋人のモルガーナに裏切られ、その腹いせに様々な嘘や卑怯な行動を取り、物語をかき乱すといった人物です。モルガーナからは貴方への気持ちはとうになくなったと言われ、彼女はオロンテの前を一度去ります。
このアリアは、モルガーナへの気持ちを払拭するかのように、「私の心を傲慢にも打ち負かすものは、彼女の美しさではなく、狂気と卑怯な執着なのだ!」と自分に言い聞かせるように歌う曲です。
 
 
―― どのような表現を心がけていますか?

前川: オロンテは非常にいびつで不器用で、何よりも繊細な心の持ち主です。
物語の中心ではありませんが、ストーリーをかき乱す重要な人物であります。しかし彼自身の行動が常に裏目裏目にでていき、彼も苦しむことになります。このアリアの前のシーンでモルガーナへの感情が爆発し、いわば躁状態ような状態で歌い上げる曲です。ですが、オロンテ自身徐々に心に限界を迎えそうになってもいます。一見キレてしまっているようで、どこかカワイソウな一面が見せられるようなバリエーションや音色を出していきたいと思います。


前川健生

――市川さんは?

市川: 3曲とも全く異なるタイプのアリアで、技術的にも感情表現的にも難しく、どれも「これはっ!」と思いますが、正直私はレチタティーヴォの方に思い入れがあります!
第2幕のアリア前にも、自身の名前を呼び、初めて自分の感情が溢れだすところ、彼女に言われたフラれ文句をそのまま言い返すところなどは、レチタティーヴォにもご注目ください!
めぐろパーシモンホールは広くてよく響くので、語りで進んでいく部分の歌詞をハッキリ聴かせるにはどうすればいいか、を考えております。声が小さすぎると遠くまで聞こえないし大き過ぎると今度は残響でやられちゃうのかなぁと。舞台稽古になったらうまいバランスをみつけたいです。
 
 
――二期会ニューウェーブ・オペラ劇場公演にご来場されるお客様にむけて。

前川: 『アルチーナ』はベルカントオペラの王道的な台本で、また魅力的な人物がたくさん登場してきます。一人一人の人物を各出演者が演出家のエヴァとディスカッションをしながら作り上げており、さらにそんな人物たちが化学反応を起こしながら物語が進んでいくさまをお楽しみいただければ幸いです。

市川: オペラはエンターテイメントですので、難しいことは抜きに純粋にライブでの音楽、テキスト、演技を楽しんでほしいです。
同時に、オペラには様々な時代背景、作曲家からのメッセージがあると思います。私がこのオペラを詳しく勉強する前、時代背景など気にせず純粋に先入観なしで感じたのは魔女狩りとニュートンでした。
終盤の合唱部分で「私は昔、石でした」というテキストからふと万有引力を連想し、魔女狩りの衰退時期とニュートンなどの科学者の出現に繋がりました。ラストのコーラスパートは、知性ある人達の考えが広まり、魔女狩りのような人間の闇が消えることで、全ての人が人間らしく生きられる、と言っているように感じました。
芸術作品も舞台も、発表してしまえば創り手にどんな考えがあっても、それをどう受け取るかはお客様に委ねられ、そこで感じたことは全て正解だと思います。今回の演出は、ヘンデルの『アルチーナ』という作品を通して皆様の自由な発想力を駆り立てる余地のある舞台になっていると思います。押し付けがましくなく寄り添ってくれる演出です。この舞台で皆様の感性を刺激するきっかけになれたら幸いです。
ベストを尽くします!!

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▼『アルチーナ』公演情報ページはこちら
二期会ニューウェーブ・オペラ劇場 G.F.ヘンデル『アルチーナ』 - 東京二期会

 指揮:鈴木秀美、演出:エヴァ・ブッフマン、管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ(NBO)
 2018年5月19日(土)17時、20日(日)14時 めぐろパーシモンホール大ホール

●お問合せ・ご予約:二期会チケットセンター 03-3796-1831
   (月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)

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