7月から始まる東京二期会共同制作公演『ばらの騎士』で元帥夫人を演じるソプラノ森谷真理が、6月12日(月)東劇でのMETライブビューイング『ばらの騎士』のプレトークに登場しました。
2006年にジュリー・テイモア演出・ジェイムス・レヴァイン指揮の『魔笛』(英語版)に夜の女王でメトロポリタン歌劇場(MET)に出演した森谷が、ライブビューイングのイベントに登場するのは今回が初めて。英語版『魔笛』がライブビューイング第1作であったことに加えて、今回はMETと同じセバスティアン・ヴァイグレが指揮をする『ばらの騎士』に主演するというタイミングが重なり、共同イベント開催の気運が高まる中で実現したのでした。
森谷真理
司会進行役には、インターネット・ラジオ「カフェ・フィガロ」などでおなじみの音楽ライター林田直樹さん。
拍手で迎えられて登壇した林田さんと森谷。上映前の20分という時間の中で、『ばらの騎士』の魅力やテーマ、元帥夫人の人物像、そして、森谷自身が体験した生のメトロポリタン歌劇場の思い出など、話題は多岐にわたりました。
ここでは、森谷自身の本公演に関係する話題を中心にご紹介しましょう。
作品の魅力は、やはり演じる役柄によって違ったものになる、と森谷。「オーストリアで私はゾフィーを5年くらい歌ってきましたが、今、元帥夫人に取り組むようになって、演技的にも、オクタヴィアンに対する感情の持ち方なども変わります。とどまることなく新しい発見があります」
『ばらの騎士』の魅力について、まず森谷が口にしたのは台本。「ホフマンスタールの台本が本当にすばらしいんですね。現代の日常生活に使用されている言葉のみでは書かれていないのですが、現代の私たちの生活で使えるような、感じられるようなフレーズ、台詞がたくさん出てきます。
朗読すると、ほんとうにメロディックで、音楽的で、美しい」
「メロディックで、音楽的で、美しい」とリフレインする林田さん。「しかし、これを歌いこなすというのは、たいへんなことなのでは?」
「ほんとうにたいへんです。自分が納得できるようになるには。でも、そこがポイントです。音楽でありながら、ハーモニーの一要素となりながら、これはあくまで台詞、あくまで芝居なのですね。特に第一幕は、お聴きなられる方にもそれを感じていただけるのではないでしょうか」
そして、元帥夫人について。
「これは先生に言われたことですが『元帥夫人は女性だったら必ず歌いたい役だ』と。おっしゃるとおりだと思います。成熟した技術と表現が求められるので、けっこう歳を重ねた方が歌われることが多いのですが、物語の設定では32歳。そのくらいの年齢の女性ならいやがおうにも感じられるような、鏡を見たときに感じる自分の老いに対する恐れや怖さ、それとまた愛情もありますね」
「愛情、もあるのですね」と林田さん。
「私は、そう、思います。やはり、時の移ろいやそれまでに自分が経験してきたことを全否定することはできない。元帥夫人は、それがオクタヴィアンという若い青年がいることでよりひしひしと思い知らされます。彼女の想いは、女性であれば洋の東西問わず誰でも抱くものだと思います。
大人であるがゆえに、身の引き方を知ってしまっている、彼女の悲しさ、そして強さ」
「そして、美しさ、ですね」
「そうですね、そうです。(元帥夫人を演じる上では)やはり〈成熟〉という言葉がキーワードになるのではないかと思います」
ここで少しMETの楽屋の思い出も。
劇場に入った印象は「プロが集まっているところ」。楽屋は「リラックスしていながらも緊張感があり、誰もが自分のしなければならないことを果たしている。それゆえにとても雰囲気がいい」。
巨大な舞台裏には「人の数が多く」て、劇場の中で「毎日よく迷っていたんですけれど」そのおかげで助かった、とか。
そして、「いつでもやっている食堂のコーヒーは、どこよりも安くて、意外とおいしい」
* * *
その後は、森谷もライブビューイングを最後まで鑑賞。週末から始まる、自身の『ばらの騎士』立ち稽古を控える中で、この日はリラックスしながらも、意義深いひとときを過ごしました。
東京二期会共同制作『ばらの騎士』ジャパンプレミエまで、あと37日。
新しい元帥夫人、森谷真理の出演は、東京7月27日(木)、30日(日)、愛知10月29日(日)、大分11月5日(日)です。ぜひお聴き逃しなく!
(写真提供:松竹)
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▼森谷真理出演、日本3都市開催・グラインドボーン音楽祭との提携公演『ばらの騎士』の詳細はこちら ・R.シュトラウス『ばらの騎士』(東京公演) - 東京二期会 2017年7月 東京文化会館大ホール<発売中> 26日(水) 18:00開演(D席 売切) 27日(木) 14:00開演(D席 売切) 29日(土) 14:00開演(S席 残少/B席 僅少/C席、D席 売切) 30日(日) 14:00開演(C席、D席 売切) (残席状況は6/19(月)現在) ・R.シュトラウス『ばらの騎士』(愛知・大分公演) - 東京二期会 2017年10月28日(土)・29日(日) 愛知県芸術劇場 <発売中> 2017年11月5日(日) 大分 iichiko総合文化センター <7/8(土)~一般発売> |