開幕まであと5日!『アルチーナ』キャスト・インタビュー第6弾は、オベルト役のソプラノ島内菜々子(19日)と齋藤由香利(20日)。二人とも二期会オペラ・デビューを飾ります。
オベルトは島にやってきた独りの少年。実際にはボーイソプラノの役です。283年前(!!)のロンドン・コヴェントガーデンでの世界初演を務めたウィリアム少年は、成長後もオラトリオ《メサイア》でもソロを任さたり、ヘンデルのもとで歌っていました。
オベルトは一見、大筋には関係のない役のようですが、3曲のアリアはどれも充実しています。
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――オベルトは、どのような役ですか?
島内: 小さな男の子の役です。
齋藤: 船が難破し、アルチーナの統治する島へたどり着いた少年です。島でお父さんが行方不明となり探しています。
島内: 実はオベルトは、原作では登場していないキャラクターなのですが、ヘンデルが当時彼のお気に入りのボーイソプラノに役を与えるために加えられました。
島内菜々子
――オベルトのアリアの中から1曲選ぶとすれば?
島内: オベルトには3曲アリアが与えられていますが、どれも全く違う雰囲気を持っていて、まだ大人になりきらない、素直なオベルトの性格が表れていると思います。特に、最初の登場と共に歌うアリアは、お父さんを見つけられないオベルトの悲しみが深く表現されています。音型が表すたどたどしさ、そして少しずつ音が上がってく様などは、オベルトが感じている切なさを見事に表現しています。
稽古でも歌うたびに、新たな発見がある曲です。
――少年らしさが音楽に書かれているのですね。
島内: オベルトがいかにお父さんを大切に思い、探し続けているか、というところが繊細に表現されています。
オペラが始まるのはブラダマンテ達が島に到着したところからですが、オベルトはその前から、ずっとひとりきりで必死にお父さんを探していました。アルチーナの島では、これまで味方はひとりもおらず、頼れる人はいなかったのです。それでも、オベルトは最後まで決して諦めません。その孤独や、苦しみ、そして強さも表現したいです。
また、この曲がオベルトの他のアリアと、いかに雰囲気が違うか、というところにも注目していただきたいです。2曲目はもうすぐ父に会えると言われて胸のときめく様子を、3曲目はアルチーナへの激しい怒りを表しています。それぞれの全く違う曲の雰囲気を感じていただきたいです。
――好きな曲ならではの難しさもありますか?
島内: ダ・カーポ・アリアならではの、2回目冒頭に戻ってきた時のアレンジです。
ヘンデルが作ったオリジナルの曲を、いかにそのまま生かし、更にアレンジを加えたらいいのか、考え続けています。特にこの曲ははっきりとした特徴を持っているということで、特徴をそのままに残しながらアレンジをするということに難しさを感じますし、同時に、そこに私自身の考えをどう取り入れるか、試行錯誤できる魅力も感じます。
繰り返された時こそより強く、曲の素晴らしさを伝えたいです。
齋藤: 私は最後のアリアです。
探していた父がアルチーナの魔法によって獣に変えられていたとわかり、怒りを爆発させます。
――オベルトのアリアは3曲あるということですが?
齋藤: オベルトは1幕毎に1曲アリアがありますが、その度に真実に気づき成長していくように思います。この最後のアリアは守られる側から守る側への転換点、強くなったオベルトを聴いていただきたいです。
齋藤由香利
――『アルチーナ』を初めてご覧になるお客様に、ズバリこの作品の見どころ、聴きどころを。
齋藤: 10年程前に初めて『アルチーナ』をDVDで観たのですが、どのアリアも魅力的で終始引き込まれたことを覚えています。今稽古をしていてもアリア毎に感情移入させられて、ブラダマンテに同情したり、アルチーナの方に同情したり、ルッジェーロにいらついたり(笑)正義や悪があるのかないのか…誰に味方したら良いのかわからなくなります。でもそれだけ7人全員が魅力的だということで、それが見どころなのかもしれません。
島内: ずばり!レチタティーヴォです。
このオペラは人間関係が複雑だと思いますが、アルチーナの島が変化していく様子は、人間関係の変化に表れます。レチタティーヴォはそれぞれの人間性が率直に表現されていますし、物語が進むにつれてどんどん面白くなっていきます。そして、演じている歌い手がそのキャラクターの何を見せたいと思っているか、それもレチタティーヴォの呼吸ひとつに表れていると感じます。
1日目と2日目では違うキャラクターの見せ方を、どちらもご覧いただくと分かっていただけるかと思います。
――お客様にむけて、本番への意気込みをお願いします。
島内: キャスト・スタッフの方々に恵まれ、素晴らしい公演になると感じております!
オベルトは幼い部分も残りますが、賢く、まっすぐな少年です。私は、彼がこのオペラの中で物語の過程と共に成長していくように感じます。最初は悩みながらも、最後は自分の意志を貫く強さを持って、アルチーナから父を取り戻す。そんなオベルトの成長を、全体通じて表現したいです。お客様にも、ひとつひとつの場面を一緒に見守っていただけたら嬉しいです。
みなさまのご来場をお待ちしております!
齋藤: 昔の、異国の、魔法のある世界の物語ですが、人として感じることは現代の日本人でも同じ、ヘンデルの音楽にのって、その心の物語をお届けしたいと思います。お楽しみいただけましたら幸いです。
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▼『アルチーナ』公演情報ページはこちら
・二期会ニューウェーブ・オペラ劇場 G.F.ヘンデル『アルチーナ』 - 東京二期会
指揮:鈴木秀美、演出:エヴァ・ブッフマン、管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ(NBO)
2018年5月19日(土)17時、20日(日)14時 めぐろパーシモンホール大ホール
●お問合せ・ご予約:二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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