2018年01月25日のエントリー

【イベント・レポート】1/21(日)二期会プレ・マチネ 映画監督 深作健太と『ローエングリン』~今、僕が考えていること

1月21日(日)に開催致しましたクラシカ・ジャパンPresents《二期会プレ・マチネ》、多くのお客様のご来場たいへんありがとうございました!

 青山のドイツ文化会館

 OAG(オー・アー・ゲー)ホール

演出家が公演前にお客様に直接話すことのできる唯一の機会とあって、「新演出だけど事前にどこまで明かしてしまうの!?」というところに注目が集まったのではないでしょうか。
トーク中は、クラシカ・ジャパンで3月放送予定の『ローエングリン』の映像も交えて展開。さらには2月21日のワールド・プレミエ公演で共演するローエングリン役の福井 敬、エルザ役の林 正子も登場して、現在進行形の稽古場の様子も含めた今回の『ローエングリン』についてそれぞれの想いを語りました。
そしてトーク後には、ソプラノ土屋優子が第1幕の「エルザの夢」、テノール菅野 敦が第3幕「ローエングリン別れの歌」をそれぞれ披露(ピアノは大藤玲子)。


 カーテンコール

最後は、《二期会プレ・マチネ》恒例のカーテンコール・フォトセッション(写真上)となりました。
フォトセッションで撮影いただいた写真は、公開いただけますので、SNSやブログなどにどうぞご活用ください。

イベントの様子の一端をお伝えするべく、まずは、深作健太が語ったワーグナー、ローエングリンについて、まさに「今、考えていること」をご紹介しましょう。


 深作健太(左)とクラシカ・ジャパンの石川 了さん

<オペラ演出について>
二期会の歌手の皆さんの大ファンだった僕が、2015年にR.シュトラウスの『ダナエの愛』で初めてオペラを演出させていただきました。オペラを演出する上で何より心がけていることは、演出が音楽の足を引っ張ってはいけない、という事。そして、歌手の皆様から出てくるものを大切にしたい。大好きなワーグナーさんの美しい音楽に寄り添いながら、歌手の皆さんの感情や身体性を大切にして稽古してゆきたい、と思っています。そういう意味では、ダブルキャストで、両チーム違った印象の仕上がりになるのでは、と思います。

<ワーグナーは僕の原点>
昔、レコード店で映画のレーザーディスクを漁っている時に、ふと店内のモニターに流れている映像が目に飛びこんできたんです。レーザー光線が飛び交う中で、槍や剣を持った人が近未来の衣装で大声で歌っている・・・これはなんだ、と思って観ていると、圧倒されて、とにかく感動したんですね。それがハリー・クプファー演出の『ニーベルングの指輪』でした。もともと子供の頃から『スターウォーズ』が大好きで、ジョン・ウィリアムズの映画音楽を聴いていると、これ、さかのぼっていくとワーグナーなんですよね。モチーフをつけて音楽が途切れなく続いていくという劇音楽の作り方ということを考えていく時に、オペラというものに突き当たって、特にドイツオペラの読み替え演出の豊かさに魅了されて、そこからワーグナーの世界にハマっていきました。そういう意味で、ワーグナーの音楽というのは自分にとって原点のような存在で、今回『ローエングリン』を演出させていただけることは、本当に夢のような出来事なんです。

<『ローエングリン』へのアプローチ>
この作品は他のワーグナー作品と比べても、一見明るくて美しい音楽に覆われているのですが、そこにはくっきりと二つに分かれた世界が描かれています。ワーグナーさん自身の台本にも、中世ドイツの「史劇」としての側面と、そして白鳥伝説のような「メルヒェン」の世界が対立していて、ローエングリン、またはオルトルートのような魔法を使う存在はその中間地点にいて、二つの世界を行ったり来たりしている。そして、ローエングリンは、最後にはやはりもといたファンタジーの世界へ帰って行ってしまうのです。
今回、僕たちが描かなければいけないは、この二つの世界の境界線。その狭間で揺れる針のような感情を、くっきりと描きたいと思いますし、そこがお客様にとっては聴きごたえのあるところだと思います。

そして、また今回演出していて作品からすごく感じるのは、父親の影といいますか、父性的なもの。ここでも主人公(ローエングリン)が、包容力と慈愛にみちた父性的なものと自分を見守る女性との間でゆれている・・・過去の先輩方の『ローエングリン』では、エルザの視点から描く演出も多かったのですけれど、僕には音楽がエルザよりも、特にローエングリンの方に強くついているように感じられ、また第二幕では今度は王制に反抗する魔女オルトルートが音楽の中心にいるように感じられています。そこが、どうも不思議な作品だなあと思っていて、今回の演出を考えるカギになってゆきました。

〈英雄〉とは何か?
ワーグナーの音楽というと、管楽器の勇ましさや、自立神経がおかしくなるような(笑)和音と旋律の進行に僕自身ハマってきたのですけれど、『ローエングリン』にはまた違った独特の明るさと美しさがあって、物語も一見、勧善懲悪の白鳥の騎士とお姫様のメルヒェンとして描くこともできるのですけれど、僕は今回この明快さの正体を突き詰めていく事こそが大切ではないか、と思っているんです。
「英雄とは何だ? 人が人を救うとはどういうことか?」ドレスデン革命に敗れた後、台頭するプロイセンの下、ドイツ帝国への統一が進む中で、王制が崩壊した後の世界をワーグナーさんがどんな風に夢見ていたのか。
長調で正々堂々とした音楽でありながらも、『ローエングリン』には、すごく危ういバランスを保って立とうとする英雄の姿が描かれているように思えるのです。結果的にはワーグナー作品唯一の救済のない悲劇として、このバランスが崩れていってしまうのですが、その危うさこそがなんとも魅力的です。
テキストの通り勧善懲悪のメルヒェンとして描くよりも、今回は『ローエングリン』を、今、日本で上演するという意味を考えました。そして、「英雄とは何か?」という事について、史実と重ねて考えてみることにしたのです。

<ローエングリンに憧れた、ヒトラーと、もうひとりの人物>
歴史上、英雄ローエングリンに憧れた有名な人物が二人います。ひとりはヒトラー。彼は、ローエングリンが最後に記した「フューラー(導き手)」という言葉を、自らの称号「総統(フューラー)」にしてしまいました。僕は今回その汚れたイメージを払拭したい。そして、もうひとりが、当時のバイエルン王ルートヴィヒ2世です。彼は政治に背を向けて、ノイシュヴァンシュタイン城をはじめ時代錯誤の城をたくさん築き、ロマンの世界に浸り浪費を重ねていく中で、「狂王」の烙印を押され遂には廃位にされてしまいました。今回、僕は、彼の人生とローエングリンの生涯を重ねることで、『ローエングリン』の根底に這うものを描けたらと考えています。
ローエングリンが去り際に歌う「スワンソング(別れの歌)」にルートヴィヒ自身の姿を重ね合わせる事で、テキストの裏側を描き出せたらな、と考えています。
エルザはまた大胆で抽象的なのですが、聖母のような存在として、ローエングリンをここではないどこか遠くに誘う天使のような存在として、ほイメージしています。

2・21ワールドプレミエにむけて!
演出の50%は事前に脳内で準備し、考えてゆきますけれど、残りの50%は稽古場で歌手の皆さんと一緒にこれから生まれてくると思っています。ここが新演出の良いところで、今日ここにいらっしゃる福井敬さんや林正子さんにも導かれながら、稽古場では今、日々新しい発見が生まれていて、僕たちの『ローエングリン』はこれからどんどん育ってゆく、という予感がしています。
大好きな準・メルクルさんや歌手の皆さんと、愛するワーグナーさんの美しい音楽の世界に飛び込んで、一緒に素敵な公演を作って行けたらと思います。そして、公演の最後の1ピースは、音楽を聴いてくださる観客の皆様です。ぜひ会場にお越しいただいて、一緒にワーグナーの世界に浸っていただけたら、と思います。
二日目の2月22日は、終演後のアフタートークを行います。今度は自分の反省会みたいになってしまいますが(笑)、ご鑑賞されたお客様にだけ、完成した作品についてお話しさせていただく機会になりますので、ぜひお越しください。
本日はどうもありがとうございました!
(深作健太のトークをもとに編集部で再編集しました)。


 左から菅野、土屋、深作、林、福井、石川さん

▼2月21日(水)プレミエ!『ローエングリン』公演詳細はこちら 《チケット絶賛発売中!》
2018年2月公演 R.ワーグナー『ローエングリン』 - 東京二期会オペラ劇場

 2月21日(水)18:00(プレミエキャンペーンあり)/22日(木)14:00(平日マチネ・スペシャル)/
  24日(土)14:00/25日(日)14:00

●お問合せ・ご予約:二期会チケットセンター 03-3796-1831
   (月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)

Gettii ←24時間受付、予約&発券手数料0円、セブン-イレブン店頭でお受取の
インターネット予約「Gettii(ゲッティ)」も是非ご利用ください!!

 
 

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【1/31(水)開催!】 「明日を担う音楽家」ソプラノ清野友香莉&テノール伊藤達人が登場!~神楽坂TheGLEEの「Nikikai@神楽坂ランチタイムコンサート」

神楽坂のアコースティック・ライブハウス、TheGLEE(ザ・グリー)の新コンサートシリーズ「Nikikai@神楽坂ランチタイムコンサート」。その第3弾として開催される1月31日(水)12時からの公演に、文化庁の新進芸術家海外研修制度の成果発表「明日を担う音楽家による特別演奏会」(2月6日(火)19時・東京オペラシティ コンサートホール)の出演者から、ソプラノ清野友香莉とテノール伊藤達人の二人が登場します。
オペラシティでのガラコンサートは、8名がそれぞれ1曲入魂で海外研修の成果披露となりますが、こちらのランチタイムはもっと気楽に、もっと幅広いレパートリーを紹介して、歌の楽しさをお伝えします。題して「新春!大好きな歌をあなたに」。清野と伊藤の二人の魅力もたっぷり味わえます。ピアノは矢崎貴子。


ソプラノ清野友香莉

テノール伊藤達人

ピアノ矢崎貴子

■■■ 公演情報 ■■■
Nikikai@神楽坂ランチタイムコンサート ~新春!大好きな歌をあなたに~
明日を担う ~ 若きオペラ歌手の競演

日時:2018年1月31日(水)12:00開演(11:30開場)
会場:The GLEE(ザ・グリー)
   東京都新宿区神楽坂3-4 AYビルB1
  (JR「飯田橋駅」西口より徒歩4分/地下鉄各線「飯田橋駅」B3出口より徒歩3分)
出演:清野友香莉(ソプラノ)、伊藤達人(テノール)、矢崎貴子(ピアノ)
予定プログラム:
 - イタリア -
 ヴェルディ 『椿姫』より 「乾杯の歌」「花から花へ~ああ、そはかの人か」
 ヴェルディ 『リゴレット』より 「風の中の羽のように」
 - フランス -
 ドリーブ 『ラクメ』より 「若いインドの娘はどこに」
 グノー 『ファウスト』より 「この清らかなすまい」
 - ドイツ -
 J.シュトラウス 『こうもり』より 「いなか娘の姿で」
 レハール 『微笑みの国』より 「きみはわが心のすべて」
 レハール 『メリー・ヴィドー』より 「高鳴る調べ」
 (※演奏予定曲は変更になる場合がございます。)
料金:全席自由 2,000円<ドリンク無料サービス(珈琲or紅茶)>
ランチタイムコンサートのお問合せ・ご予約:
 The GLEE 03-5261-3124(平日10:00-18:00)

▼アクセス方法、ご予約等、The GLEEのウェブサイトはこちらから
The GLEE|新宿区神楽坂のライブホール
 
 
《2月6日(火)開催「明日を担う音楽家による特別演奏会」情報》
▼出演者のメッセージとプロフィールは「WEBぶらあぼ」の特設ページにて公開中!
海外で実力を磨いた未来のスター歌手たちが集結! - WEBぶらあぼ
清野 「ニュルンベルクという歴史ある町での研修は忘れがたい、とても貴重な時間でした。いつか『ランメルモールのルチア』や『マノン』、『ハムレット』のオフィーリアといった、命をかけた愛に生きる女性を演じたいと強く思っております。」
伊藤「ベルリンでの生活は、30年間日本で生活してきた私には刺激的な時間であり、とても貴重な機会になりました。そこで得た感動や経験を忘れることなく、これからの日本のオペラ界を盛り上げていける歌い手になっていきたいと思います。」

▼予定プログラムが発表になりました!
最高にフレッシュなオペラガラ!全演奏曲が決定しました!~2/6(火)「明日を担う音楽家による特別演奏会」 - オペラの散歩道(二期会blog)

▼公演ページはこちら
明日を担う音楽家による特別演奏会 - 東京二期会

●「あすにな」のご予約・お問合せは
チケットスペース TEL 03-3234-9999
 (月~土10:00~12:00、13:00~18:00/日祝休業)
二期会チケットセンター TEL 03-3796-1831 (FAX 03-3796-4710)
 (平日10:00~18:00/土曜10:00~15:00/日祝休業)
 
 

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