カウンターテナー彌勒忠史のイタリア日記後半です。
5月10日(日)「二期会ゴールデンコンサートin 津田ホールvol.25彌勒忠史×アントネッロ」への意気込みもつづっています。
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みろくただし イタリア日記(2)
〜イタリアからゴールデンコンサートへ
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ルドヴィーコ・イル・モーロと言えば、後にマントヴァ侯夫人となったイザベッラ・デステの妹、ベアトリーチェ・デステが結婚したミラノのお殿様です(この辺りのお話は、塩野七生『ルネサンスの女たち』1996 中央公論新社 を読むと面白いかも)。つまりこの館はミラノのスフォルツァ家とフェッラーラのエステ家の繋がりを示す建造物である、とも言えるのですが、実際にルドヴィーコがここに滞在した、というわけではなく、彼の書記官であったアントニオ・コスタビリのものであったようです。
さて今回のイタリア滞在中、演奏会とレコーディング準備以外にも大事な用事、否、仕事をせねばなりませんでした。
それは各地の図書館に赴きNHKイタリア語講座テキスト『まいにちイタリア語』用の資料を集めること。「貴族のお作法」という、ルネサンス・イタリア貴族のマナー(食事、挨拶、身だしなみ等)についての記事を今年度より連載しているので、その資料となる1500年代の文献を、古文書室に籠っては読みあさっているのです。
私が主に利用しているのは、地元フェッラーラのアリオステア図書館、モデナのエステンセ図書館、そしてボローニャのアルキジンナズィオ図書館と市立音楽図書博物館です。
どの図書館も素晴らしい資料を所蔵しており、さらにはそれを博物館入りさせず、生きた資料として活用しているのが本当に素敵です。イタリアが文化や伝統を自国の財産として重要視し、活用している様はうらやましい限り。5/10津田ホールにおけるゴールデン・コンサートでは、上記のような図書館で出会った17世紀イタリアのアリア、カンタータなどを集めたプログラムをお届けします。
西洋音楽史に燦然と輝く17世紀イタリア声楽曲。日本では「イタリア古典歌曲」などと呼ばれ、初学者用声楽教材のイメージが強いですが、実際は強烈な音楽的コントラストと詩の世界をあますところなく伝える流麗な旋律、舞曲をベースとしたダンサブルなリズムによって構成され、ジャズにも似た音楽装飾と即興演奏も加わる、まことにエキサイティングな音楽なのです!
今回は「『作品が生まれた時のスピリット』を大切に、躍動感、生命力が備わった、音楽の持つ根源的な魅力を明らかにする」ことをコンセプトに国内外で活躍するトンガリまくりの最強古楽アンサンブル、アントネッロを共演者として、思いっきりはじけたいと思います。
乞う、ご期待!皆様、当日会場にてお目にかかりましょう!
* 写真はルゴヴィーコ・イル・モーロ館
彌勒忠史(みろく ただし) カウンターテノール◆千葉大学卒業、同大学院修了。東京藝術大学卒業。イタリア政府奨学生として渡伊。ボローニャ市立歌劇場、フェッラーラ市立歌劇場、ルーゴ・ロッシーニ劇場、ヴェローナ・ヌオーヴォ劇場等数多くの歌劇場にてオペラ、コンサートに出演。ボローニャ大学DAMSにて演出学を学んだ後、バロック・オペラを中心に数多くの作品の演出を手がける。国内でも多彩な才能を活かし、バッハ・コレギウム・ジャパン、東京オペラシティ「B→C」に出演、横須賀芸術劇場「オペラ宅配便」シリーズの企画、演出等で好評を博している。2007年フェッラーラ市、県、国立音楽院、文化財保護局及び各種団体より「在日本フェッラーラ・ルネサンス文化大使」の公式タイトルを授与される。CDに「音楽装飾されたマドリガーレ」「シレーヌたちのハーモニー」「イタリア古典歌曲集」、著作に『イタリア貴族養成講座』がある。二期会会員
◆彌勒忠史 今後の出演予定◆
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二期会ゴールデンコンサートin津田ホールVol.25「彌勒忠史×アントネッロ」 - 株式会社二期会21
二期会ニューウェーブオペラ劇場『ウリッセの帰還』 - 東京二期会オペラ劇場